
【飲食店向け】サステナブルフードの具体例とメニュー化のヒント|すぐできる取り組みも紹介
サステナブルフードの導入は、飲食店にとって避けられない一大テーマです。
しかし、どのようにメニューに取り入れればよいのか悩む方も多いのではないでしょうか?
この記事では、サステナブルフードの具体例やサステナブルメニューを導入した企業の事例を通じて、飲食店がすぐに実践可能なメニュー化のヒントを提供します。サステナブルフードのメリットを最大限に引き出し、飲食店経営を次なるステージへと進化させましょう。
目次
1:サステナブルフードとは?基本の定義と飲食業界での意味
サステナブルフードとは、環境に優しい生産方法で作られた食品や、社会的課題に配慮した食の選択を指します。これは、単なる食のトレンドではなく、持続可能な社会を築くための重要な要素です。
飲食店がサステナブルフードを取り入れることで、企業イメージの向上やリピーターの獲得につながります。
さらに、SDGs(持続可能な開発目標)とも深い関連性があり、特に目標2(飢餓をゼロに)、12(つくる責任つかう責任)、13(気候変動に具体的な対策を)、14(海の豊かさを守ろう)、15(陸の豊かさも守ろう)に直接関わります。
1-1:「サステナブル(持続可能)」の意味
サステナブルとは、「環境に負荷をかけず、資源を未来の世代に残す」という考え方です。食品分野においては、環境保全、動物福祉、生産者の権利保護が含まれます。これにより、将来にわたって安定的に食料を供給できる体制を整えます。
1-2:サステナブルフードの定義とSDGsとの関係
オーガニック、フェアトレード、代替肉、アップサイクルフードなどが、サステナブルフードとして挙げられます。これらの食品は、SDGsの達成手段として注目されています。(各食品について詳しくは後述します)
オーガニック食品は化学肥料や農薬を使用せずに生産され、フェアトレード食品は生産者に公正な報酬を保障します。これにより、環境や社会に配慮しつつ、持続可能な発展を目指します。
※エシカル消費とは、消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うことです。
2:サステナブルフードが求められる背景と社会課題
サステナブルフードが注目される背景には、持続可能な社会を目指すためのさまざまな社会課題があります。
ここでは、飲食店がサステナブルに取り組むべき理由を、具体的なデータや事例を交えて整理します。
2-1:年間612万トンの食品ロス(日本国内データ)
農林水産省データによると、年間612万トンもの食品が無駄にされている現状があります。これは、過剰な仕入れやメニューの数が多すぎること、さらには厳格な廃棄ルールが原因となっています。飲食店がこの問題に対応することで、フードロスを削減し、地球環境に貢献することができます。
※引用元:農水省ホームページ(https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2010/spe1_01.html)
2-2:畜産業による環境破壊
畜産業による環境破壊畜産業は、温室効果ガスの約14.5%を占めており、地球温暖化の一因となっています。
※引用元:国連食糧農業機関(FAO)
さらに、牛肉1kgを生産するには15,000Lもの水が必要とされ、飼料の生産のために多くの森林が伐採されています。これらの環境負荷を軽減するために、代替肉の導入が期待されています。
2-3:不平等な貿易構造と将来の食糧危機
発展途上国では、安価な労働力が搾取される不平等な貿易構造が存在しています。加えて、気候変動と人口増加により、将来的な食糧供給の不安定化が懸念されています。フェアトレード食品を活用することで、こうした問題に対して社会貢献型の消費を実現できます。
※フェアトレード食品とは発展途上国で作られた農産物や食品を、生産者の生活を支援するために適正な価格で継続的に購入する貿易の仕組みのことです。
2-4:消費者の健康志向とエシカル消費の高まり
近年では、特に若年層や女性層の間で、「社会に良いことをしている飲食店」を選ぶ動きが顕著になっています。消費者は、メニュー選定において「想い」や「ストーリー性」を求めており、飲食店がこれに応えることで強い共感と支持を得ることが可能です。
3:サステナブルフードの具体例一覧
サステナブルフードは、持続可能な未来を築くための重要な要素です。
ここでは、飲食店が知っておくべき代表的なサステナブル食材のカテゴリとその特徴を紹介します。
3-1:オーガニック食品
オーガニック食品は、農薬や化学肥料を使用せずに生産された食品で、健康志向の消費者に特に人気があります。
これらの食品は、JAS(日本農林規格)などの認証を取得していることが多く、環境への負荷を減らしつつ、安全で美味しい食材を提供します。
飲食店では、オーガニック素材の使用を明示することで、差別化を図ることができます。
3-2:代替肉(大豆ミート・発酵肉)
代替肉は、環境への影響を最小限に抑えた新たなタンパク源として注目されています。特に大豆ミートや発酵肉は、温室効果ガスの削減や水資源の節約に貢献します。
最近では、味や食感が大幅に改善され、飲食店のメニューにも取り入れやすくなっています。
3-3:サステナブルシーフード
サステナブルシーフードは、MSC(海洋管理協議会)やASC(養殖管理協議会)の認証を受けた魚介類を指します。これらは、乱獲を防止し、海洋資源を保護する目的で生産されます。
飲食店がこれらの認証を受けた食材を使用することで、消費者に安心感を提供できます。
3-4:フェアトレード食品
フェアトレード食品は、生産者に公正な報酬を支払うことで、労働環境や環境保護を促進します。コーヒー、チョコレート、バナナなどが代表的な例です。
これらの食品を採用することで、飲食店は社会貢献型の消費を推進し、消費者からの支持を得ることができます。
詳細はフェアトレードジャパン公式サイト(https://www.fairtrade.net/jp-jp.html)をご覧ください。
3-5:昆虫食
昆虫食昆虫食は、高たんぱくで低資源消費が特徴の新しいタンパク源です。商品化が進む中、飲食店でも一部で採用され始めています。昆虫食は、持続可能な未来の食料として、話題性も高くなっています。
3-6:スマート米(農薬削減米)
スマート米は、ITやセンシング技術を活用して農薬使用を抑えた次世代の米です。日本発のサステナブル農産物として注目されており、環境への配慮を示す一例として飲食店でも活用できます。
3-7:アップサイクルフード
アップサイクルフードは、廃棄予定の食材や副産物を再活用した食品です。これにより、食品ロスを削減しつつ、創造性あるメニューを提供できます。
飲食店は、ユニークなメニューを展開することで、顧客の注目を集めることが可能です。
3-8:地産地消・和食のような伝統的な持続可能食
地産地消は、地元の旬の食材を活用することで、輸送による環境負荷を低減し、地域経済にも貢献します。和食の一汁三菜や発酵食品など、伝統的な持続可能な食文化をメニューに取り入れることで、季節感や特別感を演出することができます。
以上のように、サステナブルフードは多様なジャンルで展開されており、飲食店がこれらをメニューに取り入れることで、持続可能な未来への貢献とともに、ビジネスチャンスを広げることができます。
4:サステナブルフード導入のメリットとデメリット
サステナブルフードの導入は、飲食店に多くのメリットをもたらしますが、一方でいくつかのデメリットも存在します。
ここでは、それぞれを詳しく見ていきましょう。
4-1:サステナブルフード導入のメリット
サステナブルフードを取り入れることは、飲食店にとって多くのメリットをもたらします。
まず、環境に配慮した取り組みはブランド力を高め、多くの消費者に共感を呼び、顧客の信頼を得ることができます。こうしたエシカルな姿勢はメディアでの露出やSNSでの拡散を促進し、店の知名度を向上させるとともに、健康志向の消費者層を新たに取り込むことが可能です。
加えて、オーガニックやフェアトレードといったサステナブル食材を使用することで、消費者に安心感と共感を提供し、他店との差別化を図ることができます。
さらに、従業員のモチベーション向上にも寄与し、人材確保にもつながります。このように、サステナブルフードの導入は顧客基盤の拡大と持続的なビジネス成長を後押しします。
4-2:サステナブルフード導入のデメリット
サステナブルフードの導入には、いくつかの課題があります。認証食材は一般的に高価であり、コストが増加する可能性があります。
また、これらの食材は供給が不安定な場合があり、供給チェーンの見直しが必要です。
さらに、調理や提供フローの再構築が求められることもあり、オペレーションの変更が必要となる場合があります。
4-3:デメリットを乗り越えるサステナブルフード導入の工夫と支援制度
これらのデメリットを克服するために、いくつかの工夫があります。
販促用POPや価格設計を工夫することで、消費者に対するアピールを強化し、コストを吸収することができます。
また、補助金や支援制度を活用することで、初期投資や運営コストの負担を軽減することが可能です。
これにより、サステナブルフードの導入を円滑に進めることができ、持続可能なビジネスモデルの構築が実現します。
5:すぐできる!サステナブルメニュー作りのヒント
サステナブルメニューを導入することは、飲食店にとって多くのメリットをもたらします。
ここでは、飲食店がサステナブルなメニューを作るためにヒントになる情報ををいくつか紹介します。
5-1:地産地消・旬の食材を活かす工夫
工夫地元の旬の食材を活用することは、輸送にかかる環境負荷を軽減し、地域経済にも貢献する方法です。地元で採れた新鮮な食材は、季節感を演出し、特別感を提供することができます。これにより、顧客に地域の自然や文化を感じてもらいながら、環境に優しい選択を推進できます。
5-2:フードロスを減らす設計
設計フードロスを減らすためには、小皿サイズやポーションの調整、ハーフメニューの導入が効果的です。また、食材の皮や茎を利用した一品料理を提供することで、食材を無駄なく使い切ることができます。これにより、食材の無駄を減らし、環境への負荷を軽減します。
5-3:オーガニック・認証食材を明記
オーガニック食材や認証を受けた食材を使用する場合は、メニュー表やPOPで「有機JAS」や「MSC」などのマークをわかりやすく表示しましょう。これにより、消費者に安心感を与え、環境への配慮をアピールすることができます。
5-4:プラントベース提案(ミートレスメニュー)
例えば、週に1日だけミートレスメニューを提供したり、ベジタリアン対応のメニューを取り入れることで、プラントベースの食材を提案することができます。主菜を代替肉に置き換えるだけでも、環境負荷を大幅に削減することができ、健康志向の消費者を引き付けます。
5-5:廃棄予定食材や規格外野菜を活用
廃棄予定食材や規格外野菜を活用廃棄予定の食材や規格外の野菜を活用したメニューを提供することで、食品ロスを削減しつつ、ユニークなメニューを展開できます。これにより、飲食店は話題性を高め、顧客の注目を集めることが可能です。
5-6:メニュー表記・POPで背景や価値を伝える
メニューには、「なぜこの料理がサステナブルなのか?」を丁寧に解説することが重要です。食材や生産者の背景を写真付きで紹介することで、消費者にストーリー性を伝え、共感を得ることができます。これにより、顧客との信頼関係を築き、リピーターを増やすことができます。
以上の取り組みを通じて、飲食店はサステナブルなメニューを実践し、持続可能な未来に貢献するとともに、ビジネスとしての競争力を高めることができます。
6:飲食業界のサステナブルフード事例5選
サステナブルフードの導入に成功している企業の事例を5つ紹介します。
6-1:スターバックス
スターバックスは、フェアトレードコーヒーの先駆者として知られています。世界中のコーヒー豆の多くをフェアトレード認証を受けたものから調達し、生産者の公正な報酬を保証しています。
さらに、コーヒー豆の廃棄物を肥料やバイオ燃料として再利用する取り組みも行っています。これにより、環境負荷を減らしつつ、倫理的な消費を推進しています。
また店頭での取り組みとしては、オリジナルのタンブラーや繰り返し利用できるストロー・スリーブなどを販売するなども行っています。
毎月20日は #エシカルなコーヒーの日
フェアトレード月間の今月は、「フェアトレードイタリアンロースト」を新コーヒーパスポートと共にエリアコーヒーマスターがご紹介します。https://t.co/IgkRdn8dxv pic.twitter.com/wQi8UrCYOZ— スターバックス コーヒー (@Starbucks_J) May 20, 2021
6-2:IKEA
IKEAでは、完全プラントベースの食品を低価格で提供し、サステナブルな食材を積極的に使用しています。例えば、植物性の肉団子やラーメンは人気商品となっています。
また、MSC認証を受けたシーフードを使用するなど、環境への配慮を徹底しています。
6-3:KOMEDA is □(コメダ)
コメダは、植物性食品を専門に扱うカフェ「KOMEDA is □」を運営しています。この店舗では、プラントベースのシロノワールやパンケーキなど、伝統的なメニューを植物性の素材で提供しています。
6-4:観音山フルーツパフェ
和歌山の観音山フルーツパフェは、地元で生産された旬の果物を使用しており、輸送によるCO2排出を削減しています。この取り組みは、地域経済にも貢献しつつ、地産地消のモデルケースとして注目されています。
6-5:スイーツ系事例(koé donuts・GREEN Domremy)
koé donutsでは、オーガニックや天然由来の食材を使用したドーナツを提供し、エコスイーツとして話題となっています。
また、GREEN Domremyの「植物生まれのチーズタルト」は、動物性の素材を一切使用せずに作られています。
これらのスイーツは、環境に配慮しながらも美味しさを追求しており、消費者に新たな価値を提供しています。
6-6:その他「サステイナブル・レストラン」
もっと事例を見たい!とお考えであれば、サステイナブルレストラン協会公式サイトをオススメします。
サステイナブルレストランとは、サステイナブルフードを使った料理や、廃棄を減らすなどの取り組みを行っているレストランのことです。そして、サステイナブルレストラン協会は、サステナビリティに配慮した飲食店やレストランの格付けやキャンペーンを行っている団体です。
サステナビリティレストランのリストは、サステイナブルレストラン協会公式サイト(https://foodmadegood.jp/)から確認できますのて、気になる方はぜひチェックしてみていただければと思います。
以上のような事例から、飲食店がサステナブルフードを導入することは、環境への貢献だけでなく、顧客の支持を得るための重要な戦略であることが分かります。
7:まとめ|サステナブルフードを飲食店の強みに変える時代へ
サステナブルフードの導入は、単なるコストの増加として捉えるのではなく、長期的な視点で見たブランド資産の構築として捉えることが重要です。環境に配慮した食材選びや生産者への公正な取引は、飲食店の価値を高め、顧客からの信頼を得る手段となります。
サステナブルは「コスト」ではなく「ブランド資産」
持続可能な取り組みは、単に環境に優しいだけでなく、飲食店のブランド力を高める重要な要素です。消費者は、環境や社会に配慮した企業を支持する傾向にあり、これがリピーターの増加や新たな顧客層の開拓につながります。
一つひとつの取り組みが顧客との信頼関係につながる
サステナブルなメニューを提供することで、消費者は企業の理念や取り組みに共感し、信頼を寄せるようになります。これにより、顧客との強固な関係を築くことができ、長期的な成功を収めることが可能です。
まずはできることから始めて、次のステップに広げていく意識が大切
すべてを一度に変える必要はありません。小さなステップから始め、徐々にサステナブルな取り組みを拡大していくことが重要です。例えば、サステナブル認証の食材をメニューに追加することや、フードロス削減のための新たなメニューを考案することからスタートしてみましょう。
このように、サステナブルフードは飲食店の強みとなり得ます。持続可能な未来を見据えた取り組みを通じて、競争力を高め、業界をリードする存在となることを目指しましょう。
それではこの記事は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました。